質問

「それで体の調子はどうなんや ?」

 

買い出しに連れて行ってもらう 車の中で、 運転している 弟から尋ねられる。

 

「うーんまあぼちぼちだよ。 」

 

「ぼちぼちって。」

 

「ぼちぼちは、ぼちぼちかな。」

 

「例えば ?」

 

弟の問いが続く。

 

「そうだね…。 」

 

大げさには言いたくない 。

かといって 全く平気さ は嘘になる。

伝え方が難しくて 、答えは曖昧になる。

 

「退院してからどうなんや。」

 

「ああ、退院した直後は 正直 座ってるのもしんどかったから 、それに比べたら 随分ましだよ。」

 

「そうか 。手術前 からしたらどうなん?。」

 

「手術前 からか~。体力落ちたよねやっぱり。

だって 前は買い出しがてら、 毎日 のように この道をずっと歩いていたんだもの。 」

 

ああ、そうだよな 。そうだった。

 

車の外の 道路を眺めながら、 不意にこみ上げてしまった。

 

いけないいけない。 失ったもの 惜しんで 自分を哀れんでも 仕方がない。

そんなことをすれば 底なし沼に 落ち込んでしまう 。

 

それは分かっているけれど 、こみ上げてくるものは 抑えられない。

 

そうかそうだよな。歩いてたんやもんな 。

弟の声を聴きながら 少し窓を開ける。