泣き虫

 

 

 

座れるようになった。

トイレに自力で、なんとか。

 

うう、ううって声が漏れるけど

なんとか。

 

用心しておとなしくしていたけど、

 

灯油をいれなくちゃ。

ご飯を作らなくちゃ。

 

脂汗を流しながら

文字通り

泣きながら、なんとか。

 

歩けるようになってきたので、

歩いて200mの

近くの公園まで行く。

こわごわ。

ゆっくり。

 

本当はもっと遠くにと思うけど、途中で動けなくなったらと思うと、怖くて。

 

父が生きていた頃

ある日、病院へ行くのについてこいと言われた。

 

腰は曲がっていたけれど、

私から見れば、父はまだまだ元気に思えた。

 

何かをする時、家族を巻き込んでってパターンばかりだったから、今回もそうかと、私はうんざりした。

 

通院くらい、一人で充分だろうに。

大層な。

 

 

……父は、心細かったのだな。

 

今の私と同じように、もし万が一、途中で…と思ったのだろう。

 

今になって、やっと、その「本当」がわかる気がする。

 

たった200mっぽっちの距離を恐々歩いて、公園のベンチに座って、暫く日光を浴びる。

 

お日様の光で、身体の中の悪いものよ、消えろ。

消えろ、消えろ、消え去ってしまえ。

 

そうして帰ってきた。

 

その夜、眠りについたものの、右足の激しい痛みで目が覚めて、そこから眠れなくなった。

 

あまりの痛みに

ボルタレンを飲んで、ロキソニンの湿布薬をベタベタ貼る。

 

痛みは消えずに

結局、夜が明けた。

 

情けない話だけれど、

泣けてくる。

 

一体どうなってる?

どこまで痛みは続く?

 

私はこれからどうなるんだろうと。