十三回忌

 

父が亡くなって今年で十三回忌。

 

もう、そんなに?

 

忘れるどころか、薄れるどころか、このところ父との日々を折に触れ思い出すことが増えている。

 

そうしてこんなに鮮やかであるのに…と、何処か驚いたような気持ちでいたりする。

 

7年間自宅で介護した。

そして、自宅で看取った。

 

父は要介護4で、難病を抱えていた。

血小板減少症

肺癌も併発していて、呼吸が苦しい彼のために、人工呼吸器。

 

こーーーー

こーーーーー

というその音。

 

寝たきりになった父は、血が止まりにくい病気であるから、ほんのかすり傷でもさせてはならない…と、私は神経を尖らせていた。

 

「おーい」

「おーーい」

昼夜問わず、10分もおかず私を呼ぶその声が疎ましく、光の見えない日々に立ち止まるしかなく、泣くことはしょっちゅうだった。

 

それでも、夜間は30人を1人でみるという施設には行かせたくなかった。

父を孤独にさせたくなかった。

 

ドスン

大きな音がして

あわてて父の元へ行くと、ベッドの下に父が落ちている。

 

どうして?

ちゃんと柵もつけているのに、乗り越えた?

 

骨折しても手術は出来ないのだからと、半ば叫ぶように叱りつける私に、父は言った。

 

「…歩けるような気がしたんだ。」

 

あんなに近くいて、

わかっている

父のことは。

 

そう思っていたけれど、本当は

本当のところは

何一つわかっていなかったのかもしれないと、今頃になってそんなことを考える。

 

お坊さんが来るその日には、仕事で来れないからと、弟夫婦と姪っ子が来てくれて、お墓参り。

 

そうして、みんなして弟夫婦が用意してくれたお弁当をたべた。


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ねえ、お父さん。

 

お父さん、幸せでしたか。

 

幸せと少しでも感じた瞬間はありましたか。

 

貴方の孤独を今になって思いながら、

私は空を見上げる。

 

「お義父さんのお墓参りする時は不思議に晴れますよねえ。」

 

青い

青い空。

 

お父さん。