父の介護の生活の中での話だ。
父は難病指定の突発性血小板減少症を患い、肺癌も併発していた。
呼吸器を部屋に据えて
酸素吸入。
介護の最中は、もちろん私に出来ることは、全力で…そういう気持ちでいた。
100パーセントとまではいかずとも、
父に穏やかに毎日過ごして欲しかった。
食事、オムツ換え、薬の管理
呼吸器が一度真夜中に止まった時は、
肝を冷やした。
酸素ボンベに付け替えてしのいで
業者の方が来てくださるのを、息が詰まるような思いで待ったこともある。
ちょっと調子が悪いと思われる時は
往診をお願いする。
先生がいらして
「ちょっと2週間ほど入院しましょうか。」
その2週間も毎日
1時間かけて病院へ行った。
そういう生活をしていると
家族に任されることも多くなってくる。
点滴が終わったら針をぬく。
ちょっとした止血
(血小板が少なくなると、血がとまりにくくなる。たかが止血と思われるかも知れないが、結構気を遣う。)
そんなある日、導尿をしていた看護婦さんが
「やり方教えるから、次からお願いするわね」
え?
いや、無理ですと私は言った。
簡単だからと看護婦さんは言った。
いちいち呼び出しをするより、家族がそれをする方が。
時間をもうけますから、そこで練習して。
注射の針を抜くことも、呼吸器の管理をすることも。
食事も下の世話も。
出来ることは全力でと思っていたけれど
私はそれを断った。
弟に話したら
「なんで?教えてくれるんやったら、習ってやったらいいやん。」
私のモヤモヤは理解されなかった。
あれからもう随分時間が過ぎた。
介護の現場だって変わっただろう。
色々と。
プロって
家族って
なんだろう。
そんなことを考えていた私も
もう遠い。