お隣の奥さん

お隣の奥さんが亡くなった。

 

元警察官。

同じく警察官だったご主人とは職場結婚

 

仲のいいご夫婦だった。

 

「年をとったら、自分で自分の食事くらい作れないと、いざって時に困るから。

旦那、台所で特訓してるの。」

 

その後の展開を言い当てたようなその言葉。

その時奥さんは笑ってた。

 

 

「ちょっと気分が悪い」

そう言って自室に入って

直後、奥さんは脳梗塞で倒れた。

 

 

 

入院、そして退院。

 

町内を朝早く

夫婦2人で歩く姿。

 

「負けてられないわ」

 

再発。

介護。

 

旦那様は一人でやり遂げた。

 

「だけど、あいつ、最近は気力がなくなったんかなあ。

歩こうともしなくなって…」

 

それでも今日もヘルパーさんの車が停まる。

「こんにちわ~!!」

 

なんとはなしに安心する私。

 

 

旦那様の顔に疲れが滲み

そうして、彼女は施設に入った。

 

「…コロナでね、毎日行ってはいるんだけれど、面会禁止で会わせて貰えないんですわ。

仕方がないから手紙を書いてね…。

職員のひとが側で読んで下さってるって話しなんだけれども、それでどういう反応なのかどうか…何せ会えないから何もわからんで…。」

 

お隣の奥さんが亡くなった。

 

お父さんが再婚なさって、相手のかたにも子供がいたもんだから、沢山兄弟が出来て。

 

「私は1番上だったから、仕切らないといけなくてねえ。」

 

最後は一人で。

一人で旅立たれた。

 

合掌。