十三回忌法要で、お坊さんがいらっしゃった。
父が亡くなった時にご縁が出来た。
我が家にいらっしゃるお坊さんは、某仏教大学の教授もなさっているせいか、
ざっくばらんで、法話と読経が上手な方だ。
今日は玄関で、いの一番に
「体調はいかがですか?」
「お陰様で。ありがとうございます。」
お坊さんは昔、前立腺癌を患われたことがある。
その時は抗がん剤治療のせいで脱毛甚だしく、
「元々坊主なんだからと思いはするけれど、こういうかたちの脱毛はまた、色々と違うものですな。なんだか頭が寒くてね。」
なんて仰って、毛糸の手編みの帽子をかぶってらした。
「普段、皆様にあれこれお話させていただいているけれど、自分が癌になってみると、これまたあれこれ思うことがあるものです。」
当時、そんなことを仰っていらしたこと、覚えている。
「あれからもう12年、生きさせていただきました。」
「え?もうそんなになられますか?」
「そうなんですよ。
実はあの頃水分の制限もあったりしたせいか、脳梗塞もやりまして。」
「え!?…そうだったんですか。」
「それでもね、こうして。
…副作用きついでしょう?」
「あ、はい。そうですね。」
「お大事になさってください。
しんどい時に、ようお務めされました。」
罹患場所は違えど、同じ癌患者としての共感力というか…なんか、グッと来た。
それ以上お坊さんも仰ることなく、父の十三回忌法要は無事に終わった。
「それでは失礼致します。」
「ありがとうございました。」
見送って少ししたら、物凄い雨。
「お坊さん、いい時にいらっしゃったねえ。」
「ほんとだねえ。」
本当に酷い雨。
はやくやむといいのだけれど。