言えなかった

今日は弟に送り迎えしてもらって、大腸癌の定期診察の日。

 

本当に全く気が小さいことよなあと笑われるかもしれないけれど、案の定昨夜は寝付きが悪かった。

 

いつも私を励ましてくれる友人の調子が悪い。

 

「tonchikiに比べたら、

なんてことはないわよう。」

 

彼女はそういうけれど、

ドキドキしてしまう。

 

ドキドキしたところで、私には何も出来ないのだけれど。

 

ドキドキもやもやそわそわしか出来ようもない。

 

困ったねえ。

彼女だけじゃない。

なんとか私の知る人は一人残らず健やかでという気持ちのうちに、病院へ着いた。

 

「待ってるから、いっといで。」

 

弟の声に、子供のようにハイと返事をして病院へ入ると、受付マシーンの横にクリスマスツリー。

 

ああ。

 

そうだよな。

 

病院のクリスマスツリーは、なんとなくちょっぴり切ない。

 

今、病院で頑張っている子供たち、大人たち、全ての人に平穏を。

願うことしかできない自分だけれど、しばらく見いってしまった。

 

いつものように3本分血を抜かれて、待つ。

 

年末に近づいて、病院は混んでいる。

 

診察の終わった患者さんが一人、

「良いお年を。

来年もよろしくお願いします」と言って診察室から出てきた。

 

ああ、そうね。

そうなんだけど、「来年もよろしく」という言葉、言いたくないなあなんて、ぼんやり思う。

 

これだけ世話になっているのにね。

 

血液検査結果は、OKだった。

 

思わず

「あ、良かった!!」

声が出た。

 

離島ドクターが笑う。

 

「そろそろCTをとりましょうね。

いつがいいかな。」

 

「お任せします。」

 

「年内がいいかな」

 

と、ドクターは予約のページを開いたけれど、予約ページは真っ赤。

 

みんな詰まっていた。

 

「それじゃあ、乳腺の診察日にCTやりましょう。そしたら1度で済むから。

 

「あ、はい」

 

「その結果をみて、診察ですね。」

 

「あ、はい。」

 

答えながら、来年もまたドキドキしながら、ここへ来るのだなあと

当たり前のことを考える。

 

「ありがとうございました。」

 

やっぱり

「来年もよろしくお願いします」とは言えなかった。