ブラジャーの話

フリーダムであったのだ。

私の胸はこのところ ずっと フリーダムだった。

 

だって 毎日のように 、レントゲンだの CT スキャンだの マンモだの。

 

あそこへ行って。

今度は、ここ。

 

ブラジャーを着けていると 、金具が問題になるので 、いつも「大丈夫ですか?」と注意される 。

そんなんだったら 、いっそ最初から つけていない方が 何かと便利だ。

そう私は自由だ。

フリーダム。

 

そうやって ずっと過ごしているうちに、すっかりそれに慣れてしまった。

 

退院して家に帰ってきてから も、すっかり フリーダム状態に 慣れてしまって、 むしろ 「ブラジャー?一体何の話? そんなもの 必要あるっけ。」 という状態だったのだ。

 

だけど 8月4日には、 いよいよ コロナワクチン1回目の接種。

 

「すぐに打てるように 半袖でね。 よろしくね 。」と 、いろんなところで みかけるから 、うんやっぱり そりゃ 半袖 T シャツ姿が一番かな。

 

そうなると 、

いくらなんでも フリーダム…というわけにもいくまい。

 

フリーダム時代の 終焉である 。

 

さ~てさて 。

私の ブラジャー君はどこだったかな。

あれ?ここにあったはずなんだけど。

 

どうやらブラジャー君は、 長い フリーダム時代が続くうちに、すっかりへそを曲げてしまい 、どこかへ 放浪の旅へと出かけてしまったようだ。

 

うーんどうしたものか。

重ね着でごまかすという手もあるけれど、このくそ暑いのに、重ね着…。

 

しょうがない買うか。

 

放浪の旅に出かけてしまった ブラジャー君を探すのも めんどくさくてポチる私。

 

昔それはもっと私が若い時代、 少ない給料の中から 私にしては思い切ったお金を出して アンダーウェアを揃えていた。

繊細なレース。

外国製の大人のデザイン。

身につけると 女の子としての 喜びが あった。

見せるものじゃないけれど、一人 満足して。

 

それが今じゃ。

あーやっぱり こんなに ホルモン剤のせいで スッゴく汗をかくことだし、綿素材が一番だよな。

綿素材綿素材。

そうだ 洗い替えもいるよな。 ぽっちり。

 

一瞬、 乳癌の手術をした後は 、これもいらなくなるのかもしれないと 思ったけれど 、私は ポチッと。