病院での履物は 、本当はスリッパタイプではない方がいいらしい。
病院の入院の手引きにも、そう書いてあった。
どうしたって 足元が おぼつかなくなりがちな患者にとって、靴の形を 取っていた方が 安全なのだ。
そう言われればそうだよな。
頭では理解できるけれど、そう推奨されてはいるけれど 、私はずっと サンダルを履いていた。
だって 夜中にトイレに行く時 、手術後 靴を 履くのに ちょっと しゃがむ感じになるのは、想像するだけでも、 とってもとってもとっても 大変そうだったんだもの。
私のサンダルは ひよこ色 の ビルケン。
白とかグレーとか 無彩色になりがちな 病院の世界で 、足元だけ妙にご陽気な私。
看護学生 ちゃんず が
「tonchikiさん 、お散歩に行きましょう。」 と誘いに来る と 、私はそのサンダル を履いて、「はい行きましょう 。」と 病室を出るのだった。
何度も何度も 途中で立ち止まったなぁ。
痛いし苦しいし 。
たーったこんだけの距離を 、どうして自分は 歩けないのか …そう思って 足元を見ると、 ひよこ色のサンダルが、 ご陽気に 私を見上げているのだった。
わかったわかった。
今日より明日、 明日より明後日 。
手術で生まれ変わったはずだ私は。
「tonchikiさん 、そのサンダルかわいいですね 。」
「でしょう。 ひよこ色だからね~。
私が歩く練習をする時は、ぴよぴよ サンダル が お供 してくれる から。」
少しおどけてそう言うと 、看護学生 ちゃんず の二人が笑う。
「今日は頑張りましたね。
ここまで 歩いてこれましたものね 。
ひよこちゃんサンダル 、効果あるんですね。」
そうだよ 。本当に 効果あるんだ 。
不思議なほどにね。