おしゃれとは無縁の病院生活 …ではあるんだけれど 、そうは言っても 潤いは欲しい。
私は入院している間、 病院に入っている業者の パジャマを 着ていた。
それは 味気ない ストライプの パジャマ 。
だけど 洗濯しなくてもいいし、 洗い替えも もらい放題だし。
それは コロナの中の 入院生活で、とても 助かるシステム だった。
だから まあ満足はしていたのだけれど 、隣部屋の おばさまが、
「私は そのパジャマ、どうも抵抗があってねぇ 。」と 仰る。
気持ちはわかる。
とても助かるシステムではあるけれど 、お仕着せのパジャマはやっぱり 味気ない…という気持ち。
「娘に迷惑をかけてはいけないとは思うんだけれど 。
やっぱり そのパジャマはね~。
だから 娘に 持ってきてもらってるのよ 、自分のパジャマ。 」
「あーそうなんですね 。そりゃあ自分の パジャマが 一番ですよ 。
それにその ブルーの 花柄、本当に よくお似合いですし。」
「うふふ。そう?」
そう言って おば様は微笑む 。
病院で パジャマの着替えは 結構頻繁だ 。
自宅では 3日にいっぺん、 あるいは人によっては もっと長い スタンスで 着替える と思われるけれど 、思わぬところで血がついたり 、点滴 の 液がついたり。
とにか くイレギュラーなことがあって、 病院では人によっては 、毎日着替えることになってしまう。
そのおばさまも 、用意された 娘さんが持ってきてくれた パジャマの数が足りなくなったのだろう。
「あなたに任せるから 、ちょっと パジャマ洗い替えを 買い足して 。」と娘さんに頼まれていた。
「まったくあの子何を考えているのかしら。 こんな派手なパジャマ。 」
それは 前面に ウサギのキャラクターが 描かれた 薄いピンクの パジャマ 。
確かにおばさまが今まで着ていたパジャマに比べると 、ちょっと ファンシー。
「でもとてもお似合いですよ。」
「そうかしら 。全く あのこの趣味にも 困ったもんだ わ。」
そう言っていた おばさまの部屋から 、回診の ドクターの 声が聞こえる。
「今日は可愛いパジャマ着て 。
顔色が明るく見えていいね。」
「先生 そんな 。」
答えるおば様の声が ちょっと弾んでいる。
こちらまで聞こえてくる 笑い声 。