ヤクルトのお姉さん

ヤクルトのお姉さん は、 内視鏡手術の経験者らしく 、

「あれは他の手術に比べて 楽って言われましたけれど、 きついですよね~。」 という話で 盛り上がる。

 

「あーそうですよね 。確かにきつい。」

 

血栓対策に つながるからって、 次の日から 歩かされましたけど 、プルプル震えちゃって 立ち上がるのもしんどかった です。」

 

「あー分かります。 私も 生まれたての 子鹿みたいでしたよ。」

そう言うとヤクルトのお姉さんは 笑った。

 

「でも、こないだ同級生の 男の子が来て 話したんですけど、もう今から 20年前 ほど 昔、彼の父親が私と同じ S 字結腸癌 で手術をしたらしいんです。

話を聞いていたらかなり壮絶で。

前を開いて 状態を見て 、背中も切って。

便を出すために管を入れて 。

手術後 、しばらくはずっと 垂れ流し状態で 見ているのはつらかった と彼は言ってました。

それに比べたら、ずいぶん 手術も 技術も 医療は進歩したんだと思います。

そうは言っても 確かにきついのはきつかったですけどね 。」

 

私がそう言うと、 ヤクルトのお姉さんはまた笑った。

 

「ね、 私、結構 おへその形 自慢だったんですよ 。」

 

「あら。」

 

「そしたらね 、手術の後 おへそを切ってるじゃないですか。 そのおへそを見てね ちょっと泣いちゃいましたよ。 ほんとにね 我ながら 綺麗で 可愛いおへそだったんですよ 。」

 

ヤクルトのお姉さんは そう言って また笑うのだった。