レクサスでやって来た奴

「お~元気か ?」と、 高校 時代の同級生 がいきなり 訪ねてきた。

 

この男は 高校から大学にかけて よく一緒に 遊んでいた 奴。

 

大学を卒業した頃、私に いい女を紹介しろというので 、あんたには 一生手が届かない だろうけれど まあ 目の保養 に、 一度 会わせてやろう と ガールフレンドの一人を 紹介した ことがある 。

 

その彼女は 牧瀬里穂に 似ていて 、本当に綺麗だった し、可愛かった 。

 

会った瞬間 、彼は 舞い上がり 何とかしてくれ何とかしてくれ …いや 無理。

 

だけど人間っていうのはおかしなもので なんとかの一念岩をも通す。

押して押して押して 押しまくって 、その結果、彼は 彼女と 結婚した 。

 

で、それでこの話は一段落 となればいいのだけれど、色々あって 結局 二人は別れた 。

 

それでも 彼と私の仲は変わらず 、思い出したように 連絡を取り合っては 繋がっているのだった。

 

「実はさ 、癌だって言われてさあ。」

 

玄関口でそう言うと 、彼は一瞬 驚いたように 大きな目を さらに大きく見開いたけれど 、

「そうか 。でも お前 は大丈夫や」。

 

そうして 自分で作ったんだって、自分の店で 出している 梅干しを

「今日はな 、これを お前に やろうかなと思って よったんや。 」と言う。

 

「あらありがとう。 梅粥にして 食べさせてもらうわ。 」

 

「あーそれもいいけど 、これ 焼酎に入れると すっげーうまいぞ 。完熟梅で作ってるから。」

 

「そうなんや 。そうなんやろうけど、 あんた人の話聞いてる ?

どこの どいつが 大腸癌 て言われて、手術してまた抗がん剤治療とか言っている 奴に 焼酎 薦めるってのよ。 」

 

「あそうか。 そうやな。いや 、でもお前やったら 」

 

いやいやいやいやいやいや。

二人で玄関口で 笑い顔。