おしゃべり

朝は10時に入って抗癌剤点滴は3時までかかる。

 

従って私は本を読んだり、携帯をいじっていたりしているのだけれど、片手を動かせないから眠っていたりもする。

 

ただただじっと時間が過ぎるのを待つ。

 

看護師さんは、ドクターの診察時間には伝えられなかった情報を得ようとするのか、話しかけて来るのが常で、眠ることにも携帯を弄ることにも、本を読むことにも飽きた私は、看護師さんとおしゃべりする。

 

癌患者になってみると、代替え治療のお誘いっつうか、すごいのな。

 

誰だって痛かったり吐き気と格闘したり、おもいもしない身体の変化におののく日々は嫌だろう。

 

そういう痛みや辛さは、軽減できます…そういわれれば心は揺れる。

 

聞くだに怪しいと思うものもあるけれど、大学病院で治験実績ありとか言われれば、ねえ。

まあ、やらないけどさ。

 

1回100万以上って、ほえー

 

でもお金持ってる人なら揺れる人もいるだろうって思いますよ。

 

私がそういうと、どういう治療法を選ぶのか、それはその人のそれまでの考え方、価値観を持って選択することだから、否定することも、止めることも出来ません。

 

ただ、本当に効果のあるいい治療法なら国が認めて、保険適用してみんなにってことだと思うから、標準医療をやってからだったら、結果違っていたんじゃないかってってケースも…。正直色々思う事はあるんですよ。と、看護師さん。

 

ああそうなんですねえ。と答えながら、なんだかボーッとしている。

 

運って部分もありますよねえ。と、私。

 

そういう部分もありますよねえ。

 

その人の運を強くするのも弱くするのも気力だと思うのですけれど、きつい治療中、気力がなくなるってことだってありますよねえと看護師さん。

 

そうですね。

 

だから、告知を受けるときは一緒に住んでいる御家族の方とかと一緒に聞いていただいてって、思うんですけれど。

そういう時のためにも。

 

tonntikiさんはお一人で告知を受けられたんですよね?

 

はい。母と同居しているんですけれど、高齢ですし、コロナで高齢者が病院に来るっていうのも。

 

そうでしたか。

 

なんか、言われても人のことみたいで。

自分の事って自覚するのに、時間がかかりました。

 

ここに来るときいつもスーツでいらっしゃる男性の方がいらっしゃるんですけど。

 

ああ、はい。

 

その方、

会社の役員さんだそうで、冷静で落ち着いた方なんですけれど。

 

はい。

 

だけど、この間お話ししてたら、一人で告知を受けられた日は、自分がどうやって車を運転して帰ったのか覚えていらっしゃらないって。

 

ああーと、変な調子の答え方になってしまった。

 

だけど、それを聞いて私たちは安心したんです。

だって、それが普通ですよ。

 

tonntikiさんもね、だから、少し心配していたんです。

 

自分の中に抱え込みすぎちゃうと、ねー。

痛いとか辛いとか悲しいとか、月に1度だけでも、吐き出していっていただきたいんです。

気力を保って、運を味方につけるためにも。

 

だって、お母様の前では言えないし、なけないですよね。

 

 

やだなあ

まーた涙腺決壊。

 

慌てて涙をふきながら

 

「あかんたれ子ちゃんになってしまってー」

 

思わずそう言ったら、笑われてしまって、お喋りは終ったのだった。