ドアを外した

弟がプラスドライバーを持ってきてくれた。

 

大小 様々な大きさの ドライバー。

あーよかった。

早速ドア を外しにかかる。

 

私がやろうとしたら

「あー座っといて 。 俺がやるから 。しんどいんやから。」

 

え?

ありがとう。

言われるままに甘えて座って、弟の仕事を見ていた。

 

弟 は見ている間に 、あっという間に ドアを外してくれた。

 

「あーよかった 。

ほっとしたよ 。

これで いつ業者から電話があっても大丈夫。」

 

そう言いながら、なんでか ベソベソ涙が出そうになる。

 

最近 こんなふうに涙腺がだらしないのは 、きっと ホルモン剤のせいだとは思うけれど 、でもよかった 。本当に良かった。

 

心の底から安堵して 、何度も何度も口に出す。

ありがとう。 よかったあ。

 

弟は

「ほんのちょっとしたことやのになあ。

こんなことぐらいと思うけど 、でも まあ 傷つけられたって 文句言うクレーマーとか 多いんやろな。」

 

そうだね。

 

古い冷蔵庫を入れてくれたのは、 町の小さな電気屋さんだった。

 

ふくふくと 丸い顔をした おじさんは 、ちょっとジャムおじさんに似ていて。

我が家は そのおじさんから テレビも冷蔵庫も 我が家の家電関係は すべて 買ったのだった 。

 

元気だった頃の父が言う。

「小さいけれども、故障とかあったときはこういうお店の方がいいんだ。」

 

「テレビの画面が 乱れるんですけど。」

 

「あ、はい。わかりました。」

 

すぐに飛んで来てくれた おじさんは、

「これはアンテナだなあ。

ちょっと一人では 怖いんで、申し訳ないですけれど、明日まで待っていただけますか ?」

 

「ええ構いませんよ。」

 

何度も何度もすみませんと言いながら帰っていったおじさんは、翌日 二人がかり 二階家の 屋根に上って アンテナの修理。

 

「あ、綺麗になりました !」

よかった。

いつもおじさんは 誠実な仕事っぷりだった。

 

おじさんには 子供がいなかった。

 

だから せっかく 一生懸命 お得意さんを増やしても跡継ぎが いない。

 

だから 

若い男の子 引き連れて、 一生懸命仕事を教えていた。

 

その人には軽い障害があった。

 

「僕の後は こいつに 全部 と思ってるんですよ。

ちょっと 人より 仕事は時間がかかる部分があるかもしれませんが 、その分 こいつは 丁寧に やってますから。」って 言っていたのに。

 

その若い男性が いなくなって、 おじさんは ちょっと元気がなくなって 、そして やがて 店を閉めることになった。

 

「すいません 。可愛がっていただきましたが 店を閉めることになってしまって。」

 

最後まで おじさんは 誠実だった。

 

私はそういう繋がりや 仕事っぷりに 慣れすぎているのかもしれない 。

 

今回 ネットで 依頼した 業者さんに 私は 少しぐらい 融通 なんて思ってしまうけれど、 弟が言うとおり 、お客さんの中には いろんな人がいるから クレームを入れ入れられないための 自衛のための 規定なんだろう 。

そうだ。きっとそうだ。

 

そう思いながら、 外したドアを眺める 。

 

14日、搬入で 業者さんに来ていただいたんですけれど 、古い冷蔵庫が出ないということで 帰られたんですね 。

その時 ドアを外せば 行けるということだったので、ドアを外しました。

次回はいつになりますでしょうか。

1日も早く冷蔵庫欲しいんですけど 。

 

そう言うとコールセンターのお姉さんは恐縮しながら 調べてくれた。

 

搬入は 20日となった。